卒業論文

ホームレス問題から見た貧困問題
-課題と支援策-

 

概要 
本論文の目的は日本のホームレス問題をどう解決すべきか探究することである。
方法として統計資料の分析、文献調査、自治体や民間団体の支援内容調査を実施し、考察を行った。
第 1 章では法律上の定義に当てはまるホームレスは減少しているが、住居を失った人の
状況が変化していることを論じた。第 2 章では、ホームレスが過酷な状況に置かれていることを論じた。ホームレスに陥る要因は仕事や収入の減少、失業等であり、ホームレスの課題は高齢化、路上生活の長期化、健康状態の問題、福祉制度を利用していない者が多いこと等であると述べた。第 3 章では福祉制度を利用する際に様々な問題があることを論じた。現行の福祉制度は申請主義であり、生活保護の捕捉率が低い状況にあることを説明した。第 4 章では、政府のホームレス支援政策について考察した。政府のホームレス支援は偏在しており、都市部に集中している問題を述べた。第 5 章では、民間団体のホームレス支援策について考察した。路上生活者や路上生活に陥る以前の貧困者を支える様々な取り組みがなされていることがわかった。
結論として言えることは住居を失った人の状況変化に対応した柔軟な支援策が必要なこ
とである。路上生活者は減少しているが、広義のホームレスは増加傾向にあると見られ
る。社会的包摂の概念を取り入れた貧困政策が必要だと考えられる。ホームレス状態に陥る人を減らすために労働分野では最低賃金の向上や無拠出の失業給付制度、労働環境の改善、福祉分野では困っている人を助ける仕組みづくり、住宅分野では住宅補助やライフライン代の補助が必要である。
ハウジングプア状態にある人や新型コロナウイルスの影響で貧困に陥った人の状況につ
いて探求することを今後の課題とする。 

 

目次

はじめに
第 1 章 日本のホームレスの現状
第 1 節 ホームレスとは何か
第 2 節 ホームレス概数調査
第 3 節 ネットカフェ難民
第 2 章 ホームレスに陥る要因と課題
第 1 節 ホームレス生活実態調査
第 2 節 ホームレス状態に陥る要因
第 3 節 課題
第 3 章 日本の福祉制度にはどのような問題があるのか
第 1 節 申請主義
第 2 節 生活保護の現状
第 3 節 支援策
第 4 章 政府のホームレス支援策
第 1 章 国全体のホームレス支援政策
第 2 章 事例
第 1 項 東京都
第 2 項 横浜市
第 3 項 大阪市
第 3 章 考察
第 5 章 民間のホームレス支援策
第 1 章 民間団体のホームレス支援
第 2 章 事例
第 1 項 NPO 法人自立生活センターもやい
第 2 項 TENOHASHI
第 3 項 ビッグイシュー
第 4 項 Homedoor
第 3 章 考察
第 6 章 結論
第 1 節 各章概要
第 2 節 結論
第 3 節 今後の課題
おわりに

参考文献 

 

 

はじめに 
ビッグイシュー販売者。それは私にとって最も身近なホームレスである。ビッグイシュ
ーとはホームレス状態の人が販売することで収入が得られる雑誌である。「ホームレス」とは英語で「家がない」という意味の形容詞である。「家がない」状態は貧困において極限の状態だ。ビッグイシュー販売者以外のホームレスを私は見たことがない。だが数字として日本にホームレスは存在し、ホームレス支援を報道で観ることもある。そこで、日本のホームレス問題に興味を持った。
この論文の目的は、ホームレス問題を社会問題として捉えそれをどう解決していくか探
ることである。ホームレスを減らすべきだということを主張し、ホームレス含めた貧困に陥って苦しむ人を救うにはどうしたらよいのか探究する。日本の福祉制度は制度自体がよく知られていないこと、複雑で理解しづらいこと等、様々な問題を抱えている。日本国憲法第 25 条で保障されている健康で文化的な最低限度の生活を、日本に暮らす全ての人々に保障するためにはどのような手段を取ればいいのだろうか。
私は貧困を捉える方法には 2 通り存在すると考える。第一に、貧困を自己責任だと捉え
個人に問題があるとする捉え方である。第二に、貧困を社会が生み出した産物と捉え社会に問題があるとする捉え方である。両者のどちらで捉えるかによって貧困問題への眼差しは変わってくるだろう。この論文では貧困を後者で捉える。
本論は以下のような構成で論を展開していく。まず第 1 章ではホームレスの現状につい
て論じる。次に第 2 章ではホームレスに陥る原因と課題について論じる。第 3 章では日本の福祉制度にはどのような問題があるのか論じる。第 4 章では行政のホームレス支援策について論じる。第 5 章では民間のホームレス支援策について論じる。最終章である第 6 章ではこの論文の結論を述べる。

 


1.日本のホームレスの現状 
この章では、まずホームレスの定義について述べ、ホームレス概数調査の結果を分析
し、広義のホームレスについて論じる。
1.1. ホームレスの定義
ホームレスとはいったいどんな人のことをいうのだろうか。日本の法律上の定義は他国
に比べて狭い。ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法第 2 条1) によれば「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」と規定されている。この定義にシェルター等一時宿泊施設で生活する人や不安定居住は含まれない。ホームレスとしてカウントしないことは政策の対象から外すということである。

 

例えば、イギリスの定義は占有できる宿泊施設を持たず安全に宿泊できない者等、ホー
ムレスになる恐れがある者もホームレスとしてカウントする。アメリカでは野宿またはシェルターに加え緊急的にホームレスになる恐れのある者や DV から逃げる者などだと定義している。韓国ではホームレス、シェルター及び一定期間住宅として適切性が低い施設の生活者のことである。また、カナダやフランス、ドイツにおいても野宿者だけでなくシェルター滞在者をホームレス人口調査でその対象としている(河西ら,2018)。

 


1.2. ホームレス概数調査
続いて、現在どのくらいホームレスの人々がいるのか説明する。バブル崩壊以降、ホー
ムレスは急速に増加し、社会問題と化した。厚生労働省が一年に一回実施している調査 2)において、現在日本のホームレス数は 3992 人である。日本のホームレス数は減少傾向にある。2003 年の調査 3)では 25296 人に上っていたが、2 万人強減少した。
2020 年のホームレス概数調査で男女比を見ると、3992 人中男性 3688 人(92.4%)、女性168 人(4.2%)、不明 136 人(3.4%)となっている。男性が圧倒的に多い。ホームレスの女性が少ない原因について、丸山里美(2017)は二つの理由を示している。第一に女性が世帯主の世帯が形成されにくいことである。父または夫との死別や離別により男性の稼ぎ手を失うと、貧困に直面する可能性が上昇する。そのため、結婚生活に問題があっても離婚に踏み切れないという女性は多く存在している。また、女性は社会保険から排除される傾向があり、社会福祉や公的扶助の利用が認められやすいことも指摘している。第二に性産業が生活に困窮した女性を吸収し、路上に出ることを防いでいるのだと提示している。それらに加え、女性の路上生活は男性に比べて危険であり、それによりホームレス女性が少ないことにつながっているのだと考えられる。また、性別が確認されなかった人の中にも女性が含まれているため女性野宿者の割合は 3.4%より高いことが推察される。
地域差を見ると、最も多いのは大阪府 1038 人、次いで東京都 889 人、神奈川県 719 人
となっている。日本にはドヤ街 3が各地に存在し、三大ドヤ街と呼ばれる地域は大阪の釜ヶ崎、東京の山谷、神奈川の寿町である。ドヤ街が存在することにより、ホームレス数が多くなっているものと見られる。
起居場所を見ると、都市公園 24.2%、河川 25.6%、道路 19.9%、駅舎 5.6%、その他施設
24.7%となっている。起居場所別の状況は直近 5 か年であまり変化が見られない。
統計は現状を正確に反映しているのだろうか。2015 年 10 月に設立した「ARCH」は、市民参加型ホームレス実態調査を東京都内のいくつかの区市を対象として実施している。東京都福祉保健局の「令和2年冬期路上生活者概数調査」4)と「2020 冬東京ストリートカウント」5)の結果を比較すると約 2.1 倍の差があったと発表し、東京都全体だと約 1540 人が野宿状態にあると示した。行政調査は昼間に目視で調査を実施しているため、暗数が多く存在する。終電後の夜間調査であるストリートカウントは行政の調査方法には問題があると指摘している。

また、路上の野宿者の減少は貧困の形が変容してきたことを示している。法律上の定義
に含まれない広義のホームレスについて次節で論じる。

 


1.3. ネットカフェ難民
広義のホームレスとは、法律上の定義に当てはまる路上生活者、ネットカフェ等 24 時
間営業の店舗で寝泊まりする人、友人宅や知人宅に居候する人、シェルター等施設で暮らす人等である。
2007 年に厚生労働省が実施した「日雇い派遣労働者の実態に関する調査及び住居喪失不安定就労者の実態に関する調査」6)によれば、ネットカフェ等を週の半分以上オールナイト利用する住居喪失者は約 5400 人だと発表した。就労形態別で見ると、住居喪失非正規労働者約 2700 人、住居喪失正社員約 300 人、住居喪失失業者約 1300 人、住居喪失無業者約 900 人とされている。最も多かった都道府県は東京都で約 2000 人である。また、東京都福祉保健局が 2016 年 11 月から 2017 年 1 月の間実施した「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査」7)によれば、ネットカフェ、漫画喫茶、サウナ、カプセルホテル等の昼夜滞在可能な店舗で寝泊まりしながら不安定就労に従事する「住居不安定就労者」は約4000 人であると公表した。
調査対象や調査手法が異なるためネットカフェ難民が増加したと断定することはできな
いが、増加傾向であることは十分考えられる。また、不安定就労者が 24 時間利用可能な店舗で過ごすか路上で野宿するかはその日の状況次第であるので、厚生労働省のホームレス概数調査には表れていないホームレスも存在すると考えられる。
稲葉剛(2015)は、「貧困ゆえに居住権が侵害されやすい環境で起居せざるをえない状
態」を「ハウジングプア」と定義し、大都市部において正社員の一部が「脱法ハウス」に暮らさざるを得ない状況が存在しており、若者が職場において直面する様々な困難が生活困窮に影響を与えていると述べた。萩原愛一(2010)は、そういったハウジングプア状態にある人々をターゲットにした「ゼロゼロ物件8)「無料定額宿泊所」9)等の貧困ビジネスが、住宅困窮者を窮地に追いやっている問題を提示した。
認定 NPO 法人ビッグイシュー基金の呼びかけで設立した「住宅政策提案・検討委員会」が実施した『若者の住宅問題』調査によると、親と別居している未婚・低所得の若者13.5%に安定した住居を喪失した経験があった。そして、対象者の 77.4%が親と同居していた(稲葉,2015)。若者の貧困も、女性の貧困と同様に家庭に隠されていることが推測される。
労働者に占める非正規労働者の割合は年々上昇している。総務省統計局が 2015 年に公
表した「最近の正規・非正規雇用の特徴」10)によれば、1990 年に 881 万人だった非正規雇用者数は 2014 年に 1962 万人と 2 倍以上になり、正規雇用者は 1990 年代半ば以降ほとんどの年で減少していた。こうした状況を鑑みると、ハウジングプア状態に陥る人々はますます上昇することが予想される。

 

以上のことから、法律上の定義に当てはまるホームレスは減少しているが、住居を失っ
た人の状況が変化していることが推測される。
次章ではホームレスに陥る要因と課題について見ていく。

 


2. ホームレスに陥る要因と課題 
この章では、ホームレスに陥る要因と課題を分析し考察する。


2.1. ホームレス生活実態調査
厚生労働省はホームレス生活実態調査を 5 年に一回実施している。法律上のホームレス
を対象に行う聞き取り調査である。2016 年 10 月実施の同調査 11)を分析する。
性別の状況を見ると、男性 96.2%、女性 3.8%である。2012 年 1 月実施調査結果と比べると男性 0.7 ポイント上昇、女性 0.7 ポイント下降となっている。年齢の状況は平均年齢61.5 歳で 2.2 歳上昇した。年齢階層別に見ると、「65 歳~69 歳」と「70 歳以上」の割合が高くなっている。「65 歳~69 歳」は 23.1%で前回比 6.5 ポイント上昇、「70 歳以上」は19.7%で 6.8 ポイント上昇していた。日本のホームレスは高齢化していると言える。
路上生活の形態を見ると、生活している場所が定まっている者は 77.5%である。生活場
所は公園 33.0%、河川 26.3%、道路 15.3%であり、公園の割合が 4.8 ポイント上昇している。路上生活の期間を見ると、「10 年以上」34.6%で前回比 8.6 ポイント上昇、「5 年以上10 年未満」20.5%で前回比 0.3 ポイント上昇となっている。日本のホームレスの路上生活期間は長期化していると考えられる。
仕事と収入の状況を見ると、仕事をしている者は 55.6%で、最も多い仕事は廃品回収で
70.8%である。仕事をしている者の平均収入は約 3.8 万円である。仕事による収入月額は「1 万円未満」9.6%、「1 万円~3 万円未満」30.7%、「3 万円~5 万円未満」33.6%、「5 万円以上 25.9%」となっており、「3 万円~5 万円未満」と「5 万円以上」がそれぞれ上昇している。
路上生活の直前の職業を見ると 路上生活の直前の職業を見る「建設・採掘従事者」
48.2%、「生産工程従事者」13.0%で、「建設業関係者」が約 5 割を占めている。雇用形態は「正社員」40.4%、「日雇」26.7%である。路上生活に至った理由の上位 3 つ(複数回答)は「仕事が減った」26.8%、「倒産や失業」26.1%、「人間関係が上手くいかなくて、仕事を辞めた」17.1%である。前回調査結果は「仕事が減った」34.0%、「倒産や失業」27.1%、「病気・けがや高齢で仕事ができなくなった」19.8%であった。
健康状態は、身体の不調を訴えている者が 27.1%で、このうち治療を受けていない者は
60.9%である。健康に問題を抱えているにもかかわらず、治療を受けていない者が多いのである。
福祉制度の周知・利用について見ると、「巡回相談員に会ったことがある」89.8%で、この内「会ったことがあり相談した」は 46.9%、「シェルターを知っている」70.2%、この内「利用したことがある」は 20.6%、「自立生活センターを知っている」73.2%、この内「利用したことがある」15.1%である。また、「生活保護を利用したことがある」32.9%となっている。また、生活保護を利用しなかった理由は、「自分は利用できないと思っている」や「利用したくない」といった制度の利用を肯定的に捉えていない割合が高い。したがって、福祉制度を知らない者や利用できるにもかかわらず利用していない者が数多く存在すると考えられる。
なぜ支援制度を利用しないのか。砂脇恵(2018)は、支援活動で出会うホームレス状態
の人が生活保護や医療を利用することに消極的な理由を論じている。支援を要請しない理由には大別して 4 つの理由が挙げられる。第一に自立心である。人に頼りたくない、自分でなんとかしたいと希望する声が多い。第二に行政や制度への不信感である。「水際作戦」のような違法な運用でなくとも、話を十分聞いてもらえないことや説明が難しいことにより不信感を持つ人、生活保護の医療扶助で入院した時、スタッフの心ない一言で邪険にされたと感じた人等、制度を利用したくないという理由は様々である。第三に支援を受けることへの負い目である。長期間野宿生活をしている人は他の仲間と助け合いながら暮らしていることがあり、自分だけ楽になっていいのかと負い目を感じ、生活保護の受給を躊躇う場合もある。第四に助けてと言えない場合である。支援を要請すること自体、一定の精神的余裕が前提とされるのである。
今後どのような生活を望むのかは、「就職して自活したい」21.7%、「アパートで福祉の支援を受けながら、軽い仕事をみつけたい」12.8%、「今のままでいい」35.3%という結果である。求職活動状況は「求職活動をしている」11.4%、「今も求職活動をしていないし、今後も求職活動をする予定はない」72.6%となっている。ホームレス状態のままでいいと考えている者が多く存在し、求職活動をしていない者の割合が高い状況である。
ホームレス生活実態調査の分析結果をまとめると、ホームレスに陥る要因は仕事や収入
の減少、失業等であり、ホームレスの課題は高齢化、路上生活の長期化、健康状態の問
題、福祉制度を利用していない者が多いこと等である。

 


2.2. ホームレス状態に陥る要因
なぜホームレスになるのか。その要因は様々である。そして誰もがホームレスに陥るの
ではなく、ホームレスに陥りやすい層がある。
園部雅久(1996)はホームレスを生み出す背景に 3 つの要因群を検討することが必要だ
と示した。1 つ目は景気変動の影響、グローバリゼーションや情報化等の経済の再編成が雇用に及ぼす影響、低所得向け住宅の減少、福祉政策の現状といった構造的要因である。2 つ目は家族や親族関係の変化、それと密接する都市の住まい方の変化といった関係的要因である。3 つ目は個人的要因である。これはけがや病気、高齢化等の不可抗力的な要因と、ギャンブルや酒におぼれやすいことや目標に向かって努力することが不得手といった個人的な性向である。これらの要因が複合し合ってホームレス状態に陥っていると主張した。
岩田正美(2007)は、路上に出てくる経路として安定型、労働宿舎型、不安定型という
3 つの経路があると論じた。安定型は、最も長く就いていた職は安定した常用職で、社会保険にも加入し、路上直前まで一般住宅に住んでいた人々が路上ホームレスとなったタイプである。労働宿舎型は、安定した最長職を持つ人も多いが、路上直前には職場の提供する寮や住み込み等の労働宿舎に単身で住むようになり、その後路上に出てきたタイプである。不安定型は、長期間不安定な職業を転々とし、住宅も不安定であった人々である。また、路上生活者として定義される日本のホームレスの最も大きな特徴は中高年男性に集中している点にあると述べ、未婚でいることや学歴の低いことが貧困や排除と結びついているとした。岩田(2004)によれば、ホームレスは中卒 6 割程度、高卒 3 割程度で高卒は 1割にも満たなかった。未婚率は 4 割を超えており、離死別者は東京において 4 割程度である。
ホームレス状態に陥る要因には社会的要因と個人的要因が存在している。個人的な要因
として挙げられるものに精神病、アルコール依存症ギャンブル依存症、離婚や家庭内暴力などによる家庭崩壊がある。社会的要因には企業倒産の増加、失業率や貧困率の上昇、低価格住宅の減少等がある(古郡鞆子ら,2014)。森川すいめいら(2011)が東京都の一地域のホームレスを対象に精神疾患有病率調査した結果、精神疾患ありの診断が 50%でその
内訳はうつ病 33%、アルコール依存症 15%、精神病性障害 15%であった。自殺危険度の割合では、自殺の危険あり 55.7%、過去の自殺未遂経験あり 31.6%となっていた。
このようにホームレスに陥る要因は健康問題、経済状況、人間関係等が複合的に絡んで
おり、ホームレスに陥りやすい層として低学歴、未婚であること等が挙げられる。
また、厚生労働省が実施している生活実態調査と類似した調査にビッグイシュー基金
「若者ホームレス 50 人聞き取り調査」がある。これは若者ホームレスの実態を知るため2008 年から 2010 年に調査を実施したものである。路上生活の期間は 6 か月未満が半数以上と比較的短いが、借金を抱えた経験がある人は半数近くに上っている。大半の人が終夜営業店舗と路上を行き来しており、約 4 割に抑うつ傾向、約 3 割に依存症的傾向が見られた。また、家族との連絡を取らない人は家族のいない人を含めると約 9 割で、勘当状態 2割、迷惑をかけるので取らない 3 割であった。そして最終学歴が低く中卒や高校中退の割合が大きかった(飯島・ビッグイシュー基金,2011)。若者ホームレスも、若者でないホームレスと同様に過酷な環境にいることが推察される。
ネットカフェは快適に過ごせる環境だと言えない。手足を伸ばして休めないし、換気が
十分に行われていないことで空気が淀んでいる店舗もある。屋根がない場所で野宿生活をするホームレスは高齢化しているが、広義のホームレスはそうとも言い切れない。むしろ若年化していることが推測される。

 

2.3. 課題
日本のホームレスの課題とホームレスを抜け出せない理由について説明する。高齢化、
路上生活の長期化、健康状態の問題、福祉制度を利用していない者が多いこと等に加え、貧困ビジネス感染症にかかるリスクが高いこと、襲撃事件、住所不定になることにより発生する様々な面で不利な状況、人とのつながりが途切れていること等が主な課題である。新型コロナウイルスの影響も考えられる。
まず健康問題について論じる。鈴木亘(2007)はホームレスの就業状況について、特に
健康と就業の関係について商店を当てた分析を実施し、3 つの知見を述べた。1 つ目は賃金が高いほど労働日数が少なく、賃金率が高いほど労働日数が多いという関係である。2つ目は健康状態が悪化すると就労率や賃金率が低くなり、就労率や賃金率が悪くなるとさらに健康が悪化するという関係である。3 つ目は健康状態がよいものほど賃金率の高い日雇や公的就労等につき労働日数が少ないのに対して、健康状態が悪いものは賃金率の低い廃品回収等に従事して、長い労働日数を強いられていることである。ホームレスは結核罹患率が高くなっている。大阪市のあいりん地区においてホームレスの中高年齢者を対象とした結核罹患状況の調査を実施した結果、結核有所見者 34.6%であると判明した(高鳥毛敏雄,2009)。
新型コロナウイルスの影響は、日本のホームレスコミュニティにおいて感染爆発は起こ
っていない 13)。しかしながら、住民登録がないために一部のホームレスが特別低額給付金
を貰えない事態 14)15)や、緊急事態宣言でネットカフェが休業要請の対象となった結果、
ネットカフェ難民が居場所を失う事態が発生した 16)17)18)
次に住所不定になることで発生する問題について述べる。一度路上に出ると住所がな
い、住民票がない、身分証がないといった状況に追いこまれ、就職活動さえ困難な状況に
陥る(飯島裕子・ビッグイシュー基金,2011)。長期間ホームレスを続けている人は住民登録してあった居住地が長期不在と診断され、住民票が失効する場合がある。このような住民票の削除は「職権削除」と呼ばれる。住民票が削除されると様々な行政サービスを受けることができない。無保険状態になり、選挙権の行使もできなくなるのである。つまり、住民票を削除され、保険証がないと体調が悪くても病院に行けない事態が生じる。
続いて貧困ビジネスについて述べる。貧困ビジネスとは貧困層からお金を搾取すること
で儲けるビジネスである。貧困ビジネスのターゲットになりやすい人々にはワーキングプア、日雇いを含めた短期派遣労働者生活保護受給者、ホームレス、ネットカフェ難民、多重債務者である。「ゼロゼロ物件」、生活保護費をピンハネするビジネス、「保証人ビジネス」、日雇い派遣における二重派遣偽装請負、多重債務者に偽の養子縁組をさせ借金を重ねさせる「リセット屋」などである(門倉貴史,2009)。貧困ビジネス貧困層を固定化させ、貧困から脱却することを阻んでいるのである。たとえホームレス状態から脱却できたとしても、貧困ビジネスが原因で貧困状態から脱却できないケースも存在する。

 

ホームレス襲撃事件が後を絶たない。ホームレスが殺害された事件は 2020 年だけで 3
件も起きている。2020 年 1 月東京都の上野公園で 70 代女性ホームレスが 60 代男によって殺害された事件 19)、5 月岐阜県で 80 代男性ホームレスが男子学生 5 人によって殺害された
事件 20)、11 月に東京都の渋谷区で 60 代女性ホームレスが殺害された事件 21)が起きた。
認定 NPO 法人自立生活サポートセンターもやいが実施した調査 22)によれば、4 割程度のホームレスが襲撃被害を受けていた。また若者、子どもが襲撃者の 38%を占めていた。加害者がホームレスを加害する理由にはホームレスに対する偏見、加害者自身もホームレス同様に社会的に排除された立場にいること等が考えられる。2008 年 4 月に設立した団体「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」は学校現場でホームレス問題の授業を展開している 23)代表理事の北村年子は、若者たちがホームレスに暴力をふるう理由に弱い者がさらに弱い者を攻撃する「いじめの連鎖」の構図があると語った 24)。ホームレス襲撃事件を防ぐためにはホームレスへの偏見や差別をなくす取り組みが必要不可欠である。
ホームレスに陥る人々は社会的に排除されている。湯浅誠(2008)は、うっかり足を滑
らせたらすぐにどん底の生活まで落ちる社会を「すべり台社会」と表現している。その原因として「三層のセーフティネット」が綻び始めていることを指摘した。三層のセーフティネットとは雇用のセーフティネット社会保険セーフティネット、公的扶助のセーフティネットである。また貧困に陥る背景に「五重の排除」があることを主張した。五重の排除とは第一に教育課程からの排除、第二に企業福祉からの排除、第三に家族福祉からの排除、第四に公的福祉からの排除、第五に自分自身からの排除である。自分自身からの排除とは、自己責任論を本人が内面化し何もかも諦めた心理状態である。
貧困と社会的排除はどう違うのか。阿部彩(2011)は、貧困とは必要なモノやそれを得
るための資源がないことであるが、社会的排除は社会から追い出されることであると論じた。社会的排除に相対する概念は社会的包摂であり、「社会につつみこむこと」であると述べている。社会的包摂の観点がない貧困政策は愚策だと指摘した。
このようにホームレスは不利な境遇に立たされており、それを抜け出すことは困難を極
める。
次章では、日本の福祉制度にはどのような問題があるのか論じる。

 


 
3. 日本の福祉制度にはどのような問題があるのか
この章では、日本の福祉制度の問題を論じる。福祉制度の問題の一つとして「申請主
義」を挙げる。「申請主義」によってどんな問題が生じているのだろうか。

 

3.1. 申請主義
日本の社会福祉制度は申請主義を採用している。申請主義とは次のように定義される。
社会保障社会福祉諸制度上の給付は、多くの場合、受給資格者からの受給申請を待っ
て、受給資格の有無を審査した後に、資格があれば給付を行うこととされている(長尾英彦,2012)。社会福祉制度含めた社会保障制度は、制度を知っていないと制度を利用できないのである。知っていたとしても申請手続きを行い、制度を利用できるまでの間には様々なハードルが存在する。
現在の社会保障制度が申請主義を採用している理由としては、旧生活保護法の制度が憲
法に違反しているため、現行の生活保護法に保護請求権が包含されたからである。旧生活保護法は申請する権利が認められておらず、市町村長が必要だと認めた場合にのみ生活保護制度を利用することができたのである。申請する権利が認められていないことは憲法第25 条に定められた健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障していない。したがって、現行の生活保護法第 7 条に生活保護は原則として要保護者の申請によって開始されること、保護請求権は要保護者本人以外に扶養義務者や同居の親族にも認められることが規定された。
また、生活保護法第 25 条には職権保護が定められている。保護請求権を行使できない
者や行使することが困難な者がいることから、必要な場合は申請がなくとも職権保護を実施できると規定したのである。行政が権限を持つ措置制度から契約制度に移行したのは生活保護制度に限ったことではない。生存権保障の一環として整備された障害者福祉や高齢者福祉等の福祉サービスは 1990 年代、社会福祉制度改革以降、選択や申請を前提に提供されることになった 25)

申請主義の課題は行政機関の情報提供義務が明確に定められていないこと、受理される
までのハードルが高いこと、行政窓口の職員に専門性が不足していること、スティグマ等である。
後藤玲子(2017)は申請権の認知・権利行使に至るまでの過程に何らかの問題があるた
めに受給要件を満たす者が福祉から遠ざけられているとき、制度へのアクセス障害を「申請主義の壁」と定義づけた。申請主義の壁は 4 つに大別することができるとした。第一に、行政が情報周知を怠ることにより生じる制度へのアクセス障害である「情報の壁」が存在する。第二に市民が明確にその情報を把握していないことで起きる「認知の壁」である。市民の認知能力や判断能力の不足により認知の壁が生じている場合は、自己決定の支援や職権保護が必要である。第三に制度を知っているが家族の事情、社会通念あるいは行政の不親切な対応により制度利用が抑制される「社会の壁」である。生活保護の「水際作戦」やスティグマに起因する利用抑制は社会の壁に属する。第四に「制度の壁」で、制度が複雑であることや権利行使のためのハードルが高いことによって申請負担が大きいために生じる制度へのアクセス障害である。

 

申請主義に問題が存在する結果として、生活保護の低い捕捉率や行政職員の不適切な対
応で餓死事件が発生している。次節では生活保護の問題を論じる。

 


3.2. 生活保護
生活保護とはどのような制度で、誰が利用できる制度なんだろうか。生活保護制度の目
的は最低生活の保障と自立の助長を図ることである。困窮の程度に応じ、必要な保護を行う制度である。最低生活費以下の収入の場合に誰でも受給する権利を有するが、前提として資産、能力等あらゆるものを活用することが求められる。預貯金や生活に利用していない土地があれば活用すること、働くことが可能な者は能力に応じて働くこと、年金や手当等他の制度で給付を受けられる場合はそれらを活用すること、親族等から援助を受けられる場合は受けることが求められる。相談・申請窓口は福祉事務所の生活保護担当である。
扶助の種類は 8 種類で、生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶
助、生業扶助、葬祭扶助である 26)
生活保護受給者数は 2008 年リーマンショック後に急増し、2017 年 3 月の 217 年 4335 人をピークに減少している。しかし、新型コロナウイルスの影響で、2020 年 4 月の生活保護申請件数は 2 万 1486 件で前年同月に比べ 24.8%増加、支給開始世代数は 1 万 9362 世帯で前年同月に比べ 14.8%増加していた 27)。2020 年 9 月時点で生活保護受給者数は 204 万 9409人、生活保護受給世代数は 163 万 5754 世帯となっている 28)。世帯数の内訳は高齢者世帯が 5 割以上を占めている。
生活保護の不正受給は 2018 年時点で 3 万 7287 件であり、2017 年の 3 万 9960 件と比較すると減少している。生活保護受給世帯数や生活保護支給総額に占める割合はごく僅かとなっている。不正受給の主な内訳は「稼働収入の無申告」「稼働収入の過少申告」「各種年金等の無申告」である 29)
日本の生活保護の捕捉率は他国と比較すると低い。捕捉率とは生活保護の利用要件を満
たす者のうち実際に利用している者の割合のことである。日本の捕捉率は資産要件なし
15.3%、資産要件を考慮した場合 32.1%である。スウェーデン 82%、ドイツ 64.6%、フランス 91.6%、イギリス求職者 47~59%、高齢者 62~73%、ひとり親・障害者 78~90%と比べると低い状態である(稲葉剛,2013)。日本の捕捉率は 2 割程であり、5 人に 1 人しか生活保護を利用できていないのである。
生活保護の原理は「国家責任による最低生活保障の原理」「無差別平等の原理」「最低生活保障の原理」「補足性の原理」の 4 つである。「補足性の原理」が一般に知られていないことが一因で、生活保護への偏見が生まれている。資産、能力、他制度を活用しても収入が生活保護基準であれば不足分の保護費の支給を受けることが可能なことを「補足性の原理」と呼ぶ。すなわち、収入が生活保護基準以下ならば不足している金額支給を受けることができる。「不足分を補う」という活用方法はあまり知られていない。行政機関も積極的に広報しないので、「生活保護を引き下げるべきだ」と主張する言説が蔓延している。

 

生活保護基準は、健康で文化的な最低限度の生活を営むにあたって必要な最低生活費のラインを示しているため、生活保護の引き下げは個人住民税の非課税限度額や最低賃金等数多くの制度に影響を及ぼすのである(稲葉,2013)。生活保護基準が年金や最低賃金で働いて得られる収入より高いことは是正すべきであるが、主張すべきは生活保護費の引き下げではなく年金や最低賃金の向上である。
福祉事務所まで足を運び、必要な書類を揃えて受理される間には様々なハードルがあ
る。また、受給した後に就職活動で差別を受けるケースもある。
「水際作戦」とは、福祉事務所が生活に困っている人に生活保護の申請をさせず窓口で
追い返す問題である。「住所がないと申請できない」「高齢や病気で働けない人しか使えない」等、制度に対する誤った説明をすることで申請を諦めるよう仕向けるのである。このような行政職員の不適切な対応は、最悪の場合、生活困窮や餓死、自殺等を招く。最も厳しい「水際作戦」が行われていたのは福岡県北九州市である。生活保護の予算額の総量規制、受給中世帯廃止目標数や申請書の交付枚数制限等ノルマを設定した。その結果、窓口での追い返しや保護の打ち切りにより餓死事件が頻発した(稲葉,2013)。
生活に困窮する人が福祉事務所に生活保護の申請をした場合、その親族に対して扶養が
可能かどうか問い合わせる扶養照会を行う。家族や親族に知られたくないと扶養照会を恐れて申請しない場合がある。行政から経済的援助をするように求められ親族関係が悪化したケースや、DV 被害者や虐待被害者の親族に福祉事務所が連絡してしまうケースが存在している。実家に戻れない事情を抱えている人が多くいるため、家族で問題解決するよう求めることは貧困で苦しむ人をより苦しめていると言える。
生活保護を受給している人が就職差別を受けることがある。生活保護利用者の就職活動
をサポートするハローワークの担当者が生活保護を受給していることは会社に言わない方がいいとアドバイスすることがある程、就職差別が広がっている。稲葉(2013)では「人のお金で生きている人間は雇えない」という担当者の発言が取り上げられていた。日本全国の会社がそのように主張したならば、生活保護受給者は一生就職できないだろう。
生活保護から最も排除されている層は若者である。福祉事務所はボロボロに傷つき誰が
見ても生活保護が必要な状態になってから初めて対象にするが、ボロボロな状態から回復するまでには時間がかかる。水際作戦を展開すればするほど生活保護からの自立を難しくしていると大山典宏(2008)は指摘する。
また、大山(2013)は生活保護に関係する議論は「適正化モデル」と「人権モデル」二
つのモデル、どちらかに当てはまると言っている。適正化モデルは貧困の原因を個人に求め、納税者目線に立ち、芸能人の母親が保護を受給した事件を取り上げる。濫給と呼ばれる不必要な給付を問題とし、暴力団員の不正受給や働けるのに働かない生活保護受給者を厳しく糾弾する。強調する点は個人や家族の責任であり、自助や共助の推進を目標に掲示している。一方で、人権モデルは貧困の原因を社会構造に求め、利用者目線に立ち、北九州市孤立死を取り上げる。問題とすることは漏給と呼ばれる保護から漏れることである。強調する点は政府の責任であり、公助の拡充を求めるのである。そして、自分の主張を通すことばかりにこだわるのではなく、現実的に解決可能な多くの人が合意できる課題から取り組んでいく考え方を「統合モデル」と定義した。
2020 年 10 月に生活保護費の引き下げが実施された 30)。厚生労働省は生活扶助の基準額を5年に1回見直している。2013 年に平均 6.5%、最大 10%の生活扶助基準の引き下げが決められ 3 回に分けて実行された。これに対して全国の保護利用者が、生存権を規定する憲法25条違反だとして減額処分取り消しを求める「いのちのとりで裁判」31)を展開しているが、新たに 2018 年 10 月から段階的に減額を行ってきた。食費、光熱費等の生活扶助基準は労働、教育、医療、介護等、様々な施策で悪影響を及ぼしている。
生活保護をよりよい制度に変えるにはどのような方法を取ればいいのだろうか。日本弁
護士連合会は 2019 年に「生活保護法改正要綱案(改訂版)」32)を公表した。緊急に改正を要するポイントに 5 つの柱を掲げている。第一にスティグマ軽減のための法律の名称変更や用語の変更を盛り込んだ「権利性の明確化」、第二に申請権侵害禁止規定や申請書の窓口備置き義務、広報義務や教示義務、捕捉率の調査や向上義務を明記し「水際作戦を不可能にする制度的保障」、第三に「保護基準の決定に対する民主的コントロール」、第四に「一歩手前の生活困窮層に対する積極的な支援の実現」、第五に「ケースワーカーの増員と専門性の確保」である。

 


3.3. 支援策
生活保護の低い捕捉率等、申請主義の課題を解決するにはどうすればいいのだろうか。
NPO 法人 OVA は 2017 年から「声なき声プロジェクト」を実施している。支援を必要が届いていない「声なき声」に支援を届ける工夫に関する調査の結果としてまとめた「アウトリーチの実践に今日から使えるメソッド集」33)において「子ども・若者に効果的に支援を届け
るためのポイントを紹介し、当事者が助けを求められない要因を 4 つに分類している。
要因 1 は心理的な障壁である。相談をしたときに嫌な思いをした経験や周囲の人間との
コミュニケーションで傷ついたことによって生まれる対人不信感、助けてと声を上げることができない状況におかれ続けるとその状況から抜け出すための行動を起こしづらくなった結果生まれる学習性無力感等、支援が必要な若者は心理的な障壁を抱えている。そういった若者にアプローチする手段として一見支援に見えない入り口を設けること、若者の価値観やニーズを受け止める姿勢を見せることが挙げられている。要因 2 は周囲のまなざしである。支援を受けることを恥であると捉えていること、周囲からの目線を気にしていること、人に言いづらい仕事をしていることは問題を個人や家族で抱えることにつながっている。
この要因に支援機関がアプローチするには不信感や支援への抵抗感を下げる取り組みが必要であると述べている。要因 3 は物理的な制約である。生活時間と施設の開所時間が合わず相談窓口に足を運べないこと、日時や場所の制約、家から出るために支援が必要なことは制度利用を困難にさせる。時間や場所の問題を解決するにはメールやチャットを用いたオンライン相談や、オンラインで手続き可能にすることが有効だと述べている。要因 4 は情報の届け方である。そもそも支援があることを知らないこと、情報を知らないまたは周知されていないこと、誤った理解をしていることで、支援が必要な人に情報が伝わっていない場合がある。情報発信に必要なことは、発信の方法を検討する、文面などの内容を検討する、効果測定をおこなうことであると提言している。そして最後に、支援を必要としているのに届かない「声なき声」の問題解決には「福祉アクセス」の改善が必要であると主張している。
生活に困窮する人が一人で生活保護の申請を行い、審査されて受給に至ることは難しい。申請から受理までのハードルが高い。しかしながら、そのプロセスを伴走してくれる公的支援は不十分である。つまり、生活保護制度を利用するためには民間団体等のサービスに頼らざるを得ないのである。「若者ホームレス聞き取り調査」では生活保護受給経験がある人はホームレス支援団体や法律家等からの支援を借りて申請し、受給に至っていることが明らかになっている(飯島,2011)。全国には、生活保護受給支援を実施している生活保護支援ネットワークが存在する。
問題を解決するためには生活に困っている人と制度をつなぐ支援が必要である。その一
つにアウトリーチがある。アウトリーチとは援助が必要であるにもかかわらず支援の窓口やサービスをそもそも知らない、たどり着くための能力や余裕がない等の理由で自発的に支援の申出ができない人に対し援助者の方から働きかけて支援の実現を目指すことである(阿部・鈴木,2018)。アウトリーチを実現するためにソーシャルワーカーの増員や専門性の担保が必要である。ソーシャルワーカーとは生活課題がある人の相談に応じ、支援する仕事のことである(木下・藤田,2015)。生活保護を司る福祉事務所で働くソーシャルワーカーケースワーカーと呼ばれている。
例えば、病院勤務のソーシャルワーカーが患者の中に、支援を必要としている人がいないかどうか発見する取り組みが実現すれば、制度が利用できるにもかかわらず利用していない人を制度につなげられるのである。
以上を踏まえると、生活保護を利用しやすく自立しやすい制度に変えていくこと、生活に困っている人を制度につなぐ支援、オンラインで手続きできるようにすること、行政機関が制度に関する情報を積極的に広報すること、相談に来た人へ理解しやすい制度説明をすること、制度に対する偏見やスティグマをなくすこと等が必要であると見られる。
次章では政府が行うホームレス政策について考察する。

 


4. 政府のホームレス支援策 
この章では、政府のホームレス支援政策について論じる。
4.1. 国全体のホームレス支援政策
「ホームレスの自立の支援に関する特別措置法」34)は 2002 年 7 月に成立し、同年 8 月施行した。また、2012 年に 5 年間延長が決定し、その上 2017 年に 10 年間延長が決定された。ホームレス自立支援法に基づき、「ホームレス自立支援基本方針」35)が 2003 年 7 月に策定され、2018 年 7 月新たな基本方針 36)が策定となった。
また、「生活保護に至る前の段階の自立支援策の強化を図るため、生活困窮者に対し、
自立相談支援事業の実施、住居確保給付金の支給その他の支援を行うための所要の措置を講ずる」という目的で、「生活困窮者自立支援法」37)が 2013 年 12 月に成立し 2015 年 4 月に施行した。この法律において生活困窮者とは、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者と定義されている。
日本において、これまでの社会保障は「雇用保険」「公的扶助」「就労支援」という 3 つの柱で成立していた。社会保険を中心とした高齢や失業、疾病等の誰にでも起きるリスクに対応する政策と、高齢者や障害者、傷病者等の働けない人々を対象とする生活保護を中心とした公的扶助制度によって構築されてきた。近年、働いていない人に向けた就労支援が公的扶助とセットで考えられるようになったのである(阿部,2011)。
ホームレス自立支援基本方針は各事業を提供する施設として「生活困窮者・ホームレス
自立支援センター」と「生活困窮者一時宿泊施設」を挙げている。それぞれ通称「自立支援センター」「シェルター」と呼ばれるものである。また、「ホームレスの就業機会の確保」「安定した居住場所の確保」「保健及び医療の確保」「生活に関する相談及び指導」「ホームレス自立支援事業及びホームレスの個々の事情に対応した自立を総合的に支援する事業」「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域を中心として行われるこれらの者に対する生活上の支援」「ホームレスに対し緊急に行うべき援助に関する事項及び生活保護法による保護の実施に関する事項」「地域における安全の確保等」「ホームレスの自立の支援を行う民間団体との連携」等の各課題に対する取組方針を定めている。
生活困窮者自立支援法は、主に自立相談支援事業の実施及び住居確保給付金の支給を行
う必須事業、就労準備支援事業、一時生活支援事業及び家計相談支援事業等の実施を行う任意事業、いわゆる中間的就労と呼ばれる都道府県知事等による就労訓練事業の認定で構成されている。必須事業は、福祉事務所設置自治体が「自立相談支援事業」の実施や「住居確保給付金」の支給を定めている。任意事業は、福祉事務所設置自治体が「就労準備支援事業」「一時生活支援事業」「家計相談支援事業」「学習支援事業」、その他生活困窮者の自立の促進に必要な事業を実施することができると定めている。いずれの事業も、自治体直営以外に、社会福祉協議会社会福祉法人NPO 等への委託も可能である。
次節ではホームレス数が多い都道府県及び市町村のホームレス支援政策を説明する。

 


4.2. 事例
ホームレス数の多い自治体がそれぞれどのような支援を実施しているか述べる。

4.2.1. 東京都
東京都が実施しているホームレス政策の特徴は一貫した自立支援システムの構築であ
る。自立支援システムは自立支援センターを核としている 38)39)。「ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(第 4 次)」の計画期間は 2019 年度から 2023 年度までの 5 年間である。東京都のホームレス政策を大別すると、9 つである。
第一に、自立支援システムの運営である。自立支援センターの運営を通し、ホームレス
の自立を促進している。第二に、就業機会の確保である。求人の確保や職業相談・職業紹介、職業能力の開発、身元保証の確保を行っている。第三に、安定した居住場所の確保である。公営住宅の入居斡旋や低家賃住宅の確保、緊急連絡先の確保を行っている。第四に、保健及び医療の確保である。健康診断・相談サービスの提供や結核罹患者への対応、救急医療体制の充実を図っている。第五に、生活に関する相談・指導である。窓口・街頭相談の充実や巡回相談事業の実施、福祉サービス総合支援事業の利用促進、ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者への対応を実施している。第六に、緊急援助及び生活保護である。緊急に行うべき援助の実施や生活保護法による保護の実施、路上生活者対策事業と生活保護制度の連携、市町村部のホームレスへの対応、山谷地域における対策を実施している。第七に、ホームレスの人権擁護である。広報・啓発活動の実施や、相談・支援時の人権尊重を図っている。第八に、地域における生活環境の改善である。管理する公共施設内の巡視・警備の強化等を行っている。第九に、その他の取組である。地域における安全の確保や警察と関係行政機関等との連携強化、NPO社会福祉協議会といった民間団体との連携、民生委員・児童委員の理解促進を図っている。
自立支援センターは緊急一時保護事業や自立支援事業、地域生活継続支援事業を実施し
ている。


4.2.2. 横浜市
横浜市のホームレス支援策 40)は大別して 4 つである。
第一に、生活困窮者自立支援制度である。生活困窮者支援法の施行によりホームレス支
援施策の一部を生活困窮者支援法に基づいて実施することとした。同法に基づく取組として生活自立支援施設はまかぜの運営を実施している。生活自立支援施設はまかぜの支援内容は「一時生活支援事業」、「施設型自立相談支援」、「アウトリーチ活動(巡回相談)」である。一時生活支援事業とは一定の住居を持たない生活困窮者に対して、宿泊や食事の提供、健康診断を実施する以外に、必要な日用品等を支給する事業である。施設型自立相談支援は一時生活支援事業利用者の自立を目指した事業である。個別に支援プランを作成し、自立に向けた就労等の支援や福祉サービスの利用調整等の相談支援を行っている。また、施設型自立支援事業のアウトリーチ活動として関内駅横浜駅周辺等を巡回する夜間街頭相談を実施している。
第二に、横浜市ホームレスの自立の支援等に関する実施計画である。横浜市では 2019
年度から 2023 年度までの基本的な施策の方向性を示した「第4期横浜市ホームレスの自の支援等に関する実施計画」を策定している。同計画は「4 つの基本的な考え方」「9 つの取組方針」によりホームレス自立支援を推進している。「4 つの基本的な考え方」とは個別支援、未然防止、再路上化の防止、民間団体との連携である。「9 つの取組方針」とは①就労自立の支援、②安定した居住場所確保の支援、③保健・医療の確保支援、④個々の状況に応じたきめ細やかな支援、⑤再び路上生活となることを防止する支援、⑥ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある人への支援、⑦人権擁護、⑧地域の生活環境の改善及び安全・安心の確保、⑨市民や民間団体との連携である。
第三に、ホームレス概数調査である。横浜市では毎年市内のホームレス概数の目視調査
を実施している。第四に、無料低額宿泊事業である。ホームレスの自立支援対策のひとつとして位置づける観点から無料低額宿泊事業のガイドラインを定めている。


4.2.3. 大阪市
大阪市は 2019 年度から 2023 年度までを計画期間とした大阪市ホームレスの自立の支援等に関する実施計画を定めている 41)。この計画の基本目標は総合的な自立支援、あいりん地域における野宿生活の予防と自立支援を兼ね合わせた生活上の支援、地域における生活環境の改善、人権擁護である。
大阪市が実施しているホームレス支援策は大別して 3 つである。第一に、ホームレス巡
回相談事業である。相談員が市内を巡回し、相談を行っている。帰郷を希望する人に対しては家族や知人への連絡・仲介を行い、就労を希望するひとに対しては自立支援センターへの入所を勧奨している。高齢や疾病、障害等で福祉支援が必要な人には個々の状況に適した支援を実施している。第二に、自立支援センターの設置・運営である。就労意欲のあるホームレスが一定期間入所することで就労による自立の促進を図ることを目的として自立支援センターを設置している。宿所、食事を提供するとともに、生活相談、健康指導、ハローワークと連携した職業相談、職業紹介を実施している。また、民間の賃貸住宅を活用した自立支援センター事業や、退所後の就労自立の継続を支援するためのアフターケア事業を行っている。第三に、保健医療対策である。巡回相談における医師による健康相談や精神保健相談等を実施している。
その他、関係諸機関と連携したホームレス自立支援事業として、ホームレス就業支援セ
ンター事業を行っている。自立支援センター入所者の就業自立の促進とあいりん地域の高齢日雇労働者に就業機会の提供を図る目的で民間事業所等から幅広く仕事を集め、多様な就業機会を提供している。


4.3. 考察
行政のホームレス支援は地域差が生じている。
稲田七海・水内俊雄(2009)は中間施設利用の実態について、野宿から居住生活に移行
した人のうち中間施設を利用した割合を地域別に見ると、四大都市では 84%であるのに対し、中核市・地方都市は 51%と低くなっていると分析した。
ホームレスが多い地域は都市部である。2020 年現在、7 県でホームレス数が 0 名、14 県でホームレス数が 1 名以上 10 名未満である。ホームレス数が少ない都道府県はホームレス支援が乏しい状況である。2016 年のホームレス生活実態調査によると、一時生活支援事業を実施している自治体には、シェルターと自立センターの双方を実施している自治体、シェルターのみ実施している自治体があり、一時生活支援事業を実施していない自治体もある。すなわち、ホームレスが多い都市部においてはホームレス政策を実施しているが、ホームレスが少ない地方都市ではホームレス政策が実施されていない傾向がある。日本においてホームレス政策は偏在しているのである。
柳沢房子(2006)は日本のホームレス政策と諸外国のホームレス政策がどのような意味
で異なっているのか、3 点に分けて述べている。第一に、「ホームレス」概念の違いである。多くのヨーロッパ諸国では安定した住居を持たず住居を得るために公的な援助を必要とする人々を広く指しているが、日本では野宿者のみである。第二に、ヨーロッパ諸国で広く見られるホームレスに関わる社会保障給付と日本の制度との違いである。多くのヨーロッパ諸国では無拠出の失業給付制度、公的扶助制度、住宅困窮者に対する住宅給付等のセーフティネットが、ホームレス生活者や路上生活者を含む広い範囲の失業・貧困層に適用されている。しかしながら、日本の場合、雇用保険は保険料を拠出する者に対する失業給付で無拠出の失業給付制度が存在せず、公的な住宅給付が存在しない。生活保護自治体の裁量によるところが大きい。第三に、行政と民間団体、特に自治体と NPO の協力関係が緊密で、民間団体が大規模なことである。欧米では民間企業と匹敵する大規模な諸団体が、行政と協力して支援を行っていると言っている。
諸外国と比べるとハウジングファーストという概念が日本では浸透していない。日本で
は住宅手当や家賃補助制度が存在せず、住宅扶助が出るのは生活保護利用者等ごく一部に限られている(阿部・鈴木,2018)。
また、行政によるホームレス排除政策も問題である(村田らむ,2020)。東京都は 2024年を目標とした「ゼロ」宣言、大阪市は 2025 年の万博に向けて日雇い労働者の街である西成を観光客用にリニューアルする計画を発表している。また、ホームレスを排除するための「排除アート」が増加している。ベンチの中央に間仕切りを付けて寝そべれなくしたベンチや特定の機能を持たないオブジェの設置はホームレス排除を目的としたものである。ホームレスを排除する目的で建築されたものはホームレス以外の人も排除している。
以上のことから、日本政府のホームレス支援は大都市部に集中していること、ホームレ
ス排除政策が問題となっていることが行政のホームレス対策の特徴であると言える。
次章では民間のホームレス支援策を考察する。 

 

5. 民間のホームレス支援策 
この章では、民間のホームレス支援策について論じる。


5.1. 民間のホームレス支援策
多数の NPO 団体、ボランティア団体、社会的企業、宗教団体等がホームレス支援を行っている。ホームレス支援全国ネットワーク 42)の会員は現在 82 団体 10 個人である。ホームレス支援全国ネットワークは民間ホームレス支援団体の全国的なネットワーク強化や国や自治体との協働促進を目的に 2007 年 6 月に任意団体を設立し、2010 年に法人化された。


5.2. 事例
民間団体が実施しているホームレス支援を説明する。


5.2.1. NPO 法人自立生活センターもやい
東京都新宿区にある 2001 年設立の NPO 法人自立生活センターもやい 43)は「日本の貧困問題を社会的に解決する」というミッションのもと活動を展開してきた。大西連が理事長を務めている。「もやい」という名称は水俣で使われていた「もやい直し」という言葉を拝借したものである。「もやい」には「船と船をつなぎあわせること」「よりそって共同でことをなすこと」という意味がある。もやいが目指すことは、困難な状況にある人が危険を乗り越えられるように「もやい結び」でつながるが、必要がなくなれば結び目をほどくこともできる、そのようなゆるやかな人と人とのつながり、人と社会とのつながりを拡げていくことである。
もやいが行っている事業は大別して 4 つである。
第一に、入居支援事業である。入居支援事業では、生活に困窮し住居を失った状態にあ
る人に向けて、賃貸借契約時の「連帯保証人」の引受、アパート契約をする方が保証会社を利用する際に必要となる「緊急連絡先」の提供、宅建業の免許を取得しアパート探しの支援を実施している。
第二に、生活相談・支援事業である。生活に困っている人の相談に乗り、解決策を提供
している。利用できる制度があるかどうかを検討し制度の内容や利用方法を案内したり、福祉事務所での生活保護申請に同行する等公的なサービスの利用をサポートしたりしている。
第三に、交流事業である。誰でも気軽に立ち寄れる交流サロン「サロン・ド・カフェ
こもれび」を定期的に開催している。また、食事会や行楽など「もやい結びの会」の会員を中心とした交流の場、コーヒー焙煎や農作業など働く場の開催を行っている。交流事業は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で活動を中止している。
第四に、広報・啓発事業である。年 4 回のニュースレター「おもやい通信」を発行し、
貧困問題の実態と活動の発信を行っている。また、もやいボランティアセミナーや貧困問題講座を実施している。そして、活動から見えてくる制度の問題点をまとめて厚生労働省
や東京都に制度を改善するための申入れを行っている。
もやいは貧困を「経済的な貧困」と「つながり(人間関係)の貧困」という二つの視点
で捉えている。前者には入居支援事業と生活相談・支援事業で生活基盤の回復を支援し、
後者には交流事業でつながりと自尊心の回復を支援している。


5.2.2. TENOHASI
東京都豊島区の池袋で活動する TENOHASI44)は、2003 年に活動開始した。2008 年に特定非営利法人格を取得している。TENOHASHI の由来は「手の橋」である。発足した当初の「地球と隣のはっぴい空間池袋」を英語にすると「The Earth and Neighbor Of Happy Space Ikebukuro」であり、その頭文字をつなげたものが「TENOHASI」である。精神保健福祉士の清野賢司、精神科医の森川すいめい、坂内孝雄が理事を務めており、ボランティアスタッフは約 35 名である。
TENOHASI が目指す社会は「困っている人がいれば、誰かが手を差しのべる」社会であ
る。池袋を拠点に孤立してホームレス状態にある人々がつながりを取り戻し、安心して生きていけるようにサポートすることを使命とすると同時に、この現実を広く世間に知らしめることによって差別偏見をなくし、孤立している人や生活に困っている人々がいたら、誰かが自然に手を差しのべるような地域社会をつくることを目指している。
主な活動内容は「炊き出し」「夜回り」「生活応援」である。「炊き出し」では月に数回、配食を行っている。新型コロナウイルス禍で炊き出しの方法を手作りから注文したお弁当配布に変更した。その他にも、衣類配布や生活福祉相談、医療相談、はりきゅうマッサージを無料で実施している。8 月には池袋の路上で亡くなった人の慰霊祭である夏祭り、年末年始には越年越冬活動を開催している。「夜回り」ではおにぎり配布とアウトリーチを行っている。温かいおにぎりと支援情報を掲載したチラシを一緒に配り、池袋駅周辺をまわって路上で寝ている人に医療・生活相談を実施している。
「生活応援」では、ホームレス状態の方が路上から直接入居できるアパートを提供する
「シェルター運営」、生活保護や緊急一時保護センター入所を希望する人が行政への申請の際に支援を希望する場合、サポートする「申請同行」、心身の不調を訴えた人が医療を受けるサポートを行う「医療支援」、アパートの物件探しや賃貸契約などの手続きに同行する「アパートの転居手続き・訪問と生活支援」、アパートに入居した人を訪問する「日中活動支援」を実施している。また、TENOHASI はハウジングファースト東京プロジェクトに参加している。ホームレス状態の人の多くが安定した地域生活を営み、社会の中での適切な居場所を持つには、医療や福祉のサポート必要であるという問題がある。この問題を解決するための体制と仕組を作り、動かしていくことがプロジェクトの活動である。

 

5.2.3. ビッグイシュー
ビッグイシュー45)は「ホームレスの仕事をつくり自立を応援する」ために雑誌をつく
り、その販売をホームレス状態にある人たちに独占してもらい、彼らをビジネスパートナーにして事業を展開する会社である(佐野章二,2010)。
雑誌「ビッグイシュー」はイギリス発の雑誌である。1991 年、イギリスのロンドンで創刊された。創始者はゴードン・ロディックとジョン・バードである。イギリスで知名度の高い雑誌に成長した後、ロンドン以外の都市にも広まった。それぞれ独自の編集部を持ち「ビッグイシュー」を編集しているが、掲げる理念は共通していて、それはホームレスの人が自ら働いて自立していくことを目指した「セルフヘルプ」の概念である。この理念に共感した人の手によってイギリス国外にまで普及した(佐野,2010)。ビッグイシューを販売する国はイギリス、オーストラリア、南アフリカ、韓国、日本である。
日本で創刊したのは 2003 年 9 月である。有限会社ビッグイシュー日本が大阪で「ビッ
グイシュー日本版」を創刊し、同年 12 月に東京で販売開始した。創設者は現編集長の水越洋子、現共同代表の佐野章二である。
ビッグイシュー販売は定価 450 円の雑誌『ビッグイシュー日本版』をホームレスである
販売者が路上で売り、230 円が収入になる。最初の 10 冊は無料で提供し、その売上 4,500円を元手に以降は 1 冊 220 円で仕入れるという仕組みで成立している。販売者は顔写真と販売者番号の入った身分証明書を身につけて雑誌を販売しており、雑誌販売中は以下の 8つの行動規範を守ることについて同意している。8 つの行動規範とは、①割り当てられた場所で販売すること、②ビッグイシューの ID カードを提示して販売すること、③ビッグイシューの販売者として働いている期間中、攻撃的または脅迫的な態度や言葉を使わないこと、④酒や薬物の影響を受けたまま『ビッグイシュー日本版』を売らないこと、⑤他の市民の邪魔や通行を妨害しないため、特に道路上では割り当て場所の周辺を随時移動し販売すること、⑥街頭で生活費を稼ぐほかの人々と売り場について争わないこと、⑦『ビッグイシュー日本版』の販売中に金品などの無心をしないこと、⑧どんな状況であろうとビッグイシューとその販売者の信頼を落とすような行為をしないことである。
2020 年現在、ビッグイシューの販売場所は、大阪府奈良市京都市兵庫県、東京
都、横浜市川崎市仙台市名古屋市、札幌市、熊本市金沢市岡山市である。
ビッグイシュー日本版のコンセプトは「誰もが排除されない、すべての人が生きやすい
社会、特に若い世代が希望をもって生きられる社会を作るのに役立つ情報発信」である。社会問題からエンターテインメントまで多様な記事を掲載している。毎号各地のビッグイシュー日本版販売者や世界のストリートペーパー販売者が登場する「販売者に会いにいく」や、読者からの悩みにホームレスが答える「ホームレス人生相談」もある。
2007 年 9 月には NPO ビッグイシュー基金 46)を設立した。約 4 年の活動を通してホームレスの人々の自立には、就業を含めた総合的なサポートが必要であると考えたゆえの決断である。活動の中で「ビッグイシュー」は「就労自立」「脱路上」が難しいこと、「自立が難しいことに直面していったのである(八鍬加容子,2019)。ビッグイシュー基金は 3 つの事業を柱に、各種のプログラムを通じて、貧困問題の解決と「誰にでも居場所と出番のある包摂社会」の形成を目指している。3 つの事業とは「ホームレスの人たちを中心に困窮者の生活自立応援」「ホームレス問題解決のネットワークづくりと政策提案」「ボランティア活動と市民参加」である。
ビッグイシュー基金は、ホームレスのみが選手として参加するストリートサッカーの世
界大戦「ホームレスワールドカップ」に「野武士ジャパン」47)を派遣している(岡田千あき,2016)。これまでに 2004 年のスウェーデン大会、2009 年のミラノ大会、2011 年のパリ大会に出場し、2012 年には韓国の代表チームとソウルで日韓戦を開催した。
ビッグイシュー日本版は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、「コロナ緊急3ヵ
月通信販売」48)を実施している。路上に人がいなくなり、路上の販売ができなくなるという死活問題に対応するためのものである。売上金は販売者に配分金として配分される。加えて、雑誌の販売以外の仕事づくりとして「夜のパン屋さん」プロジェクト 49)を行っている。このプロジェクトは、料理研究家NPO 法人ビッグイシュー基金共同代表の枝元なほみを中心としたメンバーにより 2019 年から取り組んできた。販売場所は東京都新宿区のかもめブックス軒先で、2020 年 10 月にプレオープンした。パン屋から売れ残りそうなパンを購入し再販することで、食品ロス削減にもつながる取り組みである。


5.2.4. Homedoor
大阪府大阪市で活動する認定 NPO 法人 Homedoor 50)は 2010 年 4 月に設立した団体である。川口加奈が理事長を務めている。14 歳でホームレス問題に出会い、19 歳で Homedoorを設立した。
Homedoor では 6 つのチャレンジを通じて、ホームレスの人々の路上脱出のサポートを行っている。6 つのチャレンジは①「届ける」②「選択肢を広げる」③「“暮らし”を支える」④「“働く”を支える」⑤「再出発に寄り添う」⑥「伝える」で構成されている。
①「届ける」では巡回活動「ホムパト」や、インターネットカフェ・24 時間営業のファ
ストフードの店舗等へのポスター・バナー広告設置を実施している。②「選択肢を広げ
る」では初回相談のアセスメントや宿泊施設「アンドセンター」の提供、支援ネットワークづくりを実施している。③「“暮らし”を支える」では生活応援施設「アンドセンタ
ー」の設置や無料で食べられる給食「アンド食堂」、健康づくりを応援する「アンドヘルス」を行っている。④「“働く”を支える」では就労機会の提供、一般就労移行、金銭管理サポートを実施している。⑤「再出発に寄り添う」では居宅生活移行サポートと一般就労移行サポートを実施している。また、ホームレス状態を脱出した「卒業生」が「卒業サポーター」として活動に参加している。⑥「伝える」では講演・ワークショップや路上生活者調査「大阪ストリート・カウント」、啓発用教材販売を実施している。

 

 

5.3. 考察
ホームレス支援を実施する民間団体の課題は、職員や資金が不足していること、世論の
理解が足りないこと、支援が局地化していることである。
ホームレス支援における行政と民間団体の関係について、中山徹(2009)が NPO は行政の下請けになってはいけないこと、行政も NPO を下請け化せず事業の主体として両者が補完する関係になることが必要なことを指摘している。
白波瀬達也(2012)は新たに生じた福祉課題に対し柔軟性や機動性を欠きがちな国・地
自治体の対応は限定的であり、そうして生み出される「制度の隙間」において民間団体の取り組みが際立っていることを論じている。公的なホームレス支援が乏しい地方都市で、民間団体は重要な役割を担っていることが推察される。行政に比べて支援対象が幅広いことは、民間支援の有効性を示している。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により民間団体を訪れる相談者は増加している。
Homedoor では相談者が前年度比約 3 倍に増加した 51)。緊急事態宣言を受けて失業した人や収入が減ったという人が多く来所したのである。Homedoor は感染拡大のピーク後こそ支援が必要であり、現時点で路上に追いやられるほど困っていない人も数ヶ月後には困窮度が高まっている可能性は大いにあると述べている。職員や資金が不足している問題を解決するには、ボランティアや寄付が必要である。
次章ではこの論文の結論を述べる。

 


6. 結論 
この章では、まず各章で述べてきたことを概説する。次いで結論を主張し、今後の課題
を論じる。


6.1. 各章概要
第 1 章では法律上の定義に当てはまるホームレスは減少しているが、住居を失った人の
状況が変化していることを論じた。第 2 章では、ホームレスが過酷な状況に置かれていることを論じた。ホームレスに陥る要因は仕事や収入の減少、失業等であり、ホームレスの課題は高齢化、路上生活の長期化、健康状態の問題、福祉制度を利用していない者が多いこと等であると述べた。第 3 章では福祉制度を利用する際に様々な問題があることを論じた。現行の福祉制度は申請主義であり、生活保護の捕捉率が低い状況にあることを説明した。第 4 章では、政府のホームレス支援政策について考察した。政府のホームレス支援は偏在しており、都市部に集中している問題を述べた。第 5 章では、民間団体のホームレス支援策について考察した。路上生活者や路上生活に陥る以前の貧困者を支える様々な取り組みがなされていることがわかった。

 

6.2. 結論
この論文で明らかにできたことは住居を失った人の状況変化に対応した柔軟な支援策が
必要なことである。路上生活者は減少しているが、広義のホームレスは増加傾向にあると見られる。社会的包摂の概念を取り入れた貧困政策が必要だと考えられる。ホームレス状態に陥る人を減らすために労働分野では最低賃金の向上や無拠出の失業給付制度、労働環境の改善、福祉分野では困っている人を助ける仕組みづくり、住宅分野では住宅補助やライフライン代の補助が必要である。


6.3. 今後の課題
この論文で明らかにできなかったことはハウジングプア状態にある人の状況、子どもの
貧困、貧困の世代間連鎖である。また、新型コロナウイルスがいつ収束するのか不明であり、国の支援策も不十分である。日本における貧困について探究することを今後の課題とする。


おわりに 
執筆のために民間団体の支援を調べる中で、ホームレス支援に関わるボランティアに参
加してみたいと思った。 

 

 

注 
1)ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=414AC1000000105
2)ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12485.html
3) ホームレスの実態に関する全国調査報告書 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/03/h0326-5c.html
4)ドヤ街とは日雇い労働者が多く住む街である。
5)令和 2 年冬期路上生活者概数調査の結果 東京都保健福祉局
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/07/22/02.html
6) 2020 冬東京ストリートカウントの結果(東京都発表との比較)
https://www.archomelessness.org/singlepost/2020/08/03/2020%E5%86%AC-%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%8
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7) 日雇い派遣労働者の実態に関する調査及び住居喪失不安定就労者の実態に関する調査の概要
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/08/h0828-1.html
8) 「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査」の結果
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/26/14.html
9)ゼロゼロ物件とは不動産賃貸業者により敷金礼金ゼロを謳い文句に賃貸される住居。敷金礼金はゼロだが、別の名目で費用負担を要求するケース等トラブルが後を絶たない。
10) 無料定額宿泊所とは社会福祉法第 2 条第 3 項第 8 号に定められた「生計困難者のために、無料又は低額な料金で簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他施設を利用させる事業」に基づき、設置される施設のことで、NPO 団体が主な運営主体である。住む場所を失った生活保護受給者等を受け入れる施設である。その中には、入居者から高額な料金を徴収するといった問題の多い施設が存在する。
11) 統計局ホームページ 統計 Today No.97 - Stat
http://www.stat.go.jp/info/today/097.html#k2
12)ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)の調査結果(全体版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177700.html
13)なぜホームレスはコロナに感染しないのか?支援団体が明かす究極の対策
 https://diamond.jp/articles/-/243720
14)ホームレス、届かぬ10万円 住民登録なく対象外に―定額給付金、申請期限迫る
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020082100755&g=pol
15)ホームレス、届かぬ 10 万円 住居の設定が壁に…
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/644985/
16)「ネットカフェ難民」漂流の危機-コロナ禍のしわ寄せ、若い世代にも
https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00597/
17)コロナで暗転、61 歳ネカフェ難民の憂い 内定取り消し、10 日で解雇… やっと採用
も消えぬ不安
https://www.tokyo-np.co.jp/article/39699
18)所持金 30 円…「3 日間何も食べていない」ネットカフェ難民の困窮
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/603853/
19)ホームレス女性を殺害容疑 上野、60代の男書類送検
https://www.sankei.com/affairs/news/200330/afr2003300019-n1.html
20)「猫たちが帰り待っている」共に生活した女性語る 岐阜ホームレス殺人
https://mainichi.jp/articles/20200427/k00/00m/040/031000c
21)渋谷・女性ホームレス殺害「痛い思いをさせればいなくなる」を地でいくこの社会
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5fbe0573c5b66bb88c627a48
22)【再掲】野宿者への襲撃の実態に関する調査の概要および要望書【 2014 年】
https://www.npomoyai.or.jp/20170203/2639#i
23)ホームレス問題の授業づくり全国ネット
http://hc-net.org/
24)「ホームレス」襲撃事件は子どもたちの“いじめの連鎖”
https://www.tokyo-jinken.or.jp/publication/tj_43_feature1.html
25)ポスト申請主義を考える会
https://peraichi.com/landing_pages/view/posshin
26)生活保護制度 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/
27)生活保護申請 24・8%増 新型コロナ影響 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61017080R00C20A7CR8000
28)被保護者調査(令和2年9月分概数)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hihogosya/m2020/09.html
29)生活保護制度について
https://www.mhlw.go.jp/topics/2020/01/dl/9_shakaiengo-03.pdf
30)自公政権 生活保護来月から減額
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-09-09/2020090915_01_1.html
31)いのちのとりで裁判全国アクション
https://inochinotoride.org/index.php
32)生活保護法改正要綱案(改訂版)
https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2019/190214_2.html
33)社会福祉の支援を届けるアウトリーチ方法と事例集を公開 声なき声プロジェクト
https://outreacher.ova-japan.org/outreach-methods/
支援者の考える支援が届いていない要因とそれに対してどのようなアウトリーチが行
われているのかを冊子にまとめている。
34)ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=414AC1000000105
35)ホームレスの自立の支援等に関する基本方針
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/12/s1216-5v.html
36)ホームレスの自立の支援等に関する基本方針 平成 30 年
https://www.mhlw.go.jp/content/000485229.pdf
37)生活困窮者自立支援法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000105
38)東京都福祉保健局 ホームレス対策
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/seikatsu/rojo/homelesstaisaku.htm
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39)東京都福祉保健局 ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(第 4 次)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/seikatsu/rojo/keikakusakutei4.htm
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40)横浜市 ホームレス支援策
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/fukushikaigo/seikatsu/homeless/homel
ess.html
41)大阪市 ホームレス自立支援施策について
https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000008085.html
42)NPO 法人ホームレス支援全国ネットワーク
http://www.homeless-net.org/
43)特定非営利活動法人自立生活サポートセンター・もやい
https://www.npomoyai.or.jp/
44)特定非営利活動法人 TENOHASI
https://tenohasi.org/
45)ビッグイシュー日本版
https://www.bigissue.jp/
46)ビッグイシュー基金
https://bigissue.or.jp/
47)野武士ジャパン
https://www.nobushijapan.org/
48)第4次「コロナ緊急3ヵ月通信販売」概要と第1次~3次のお礼/“家なき人”とともに
https://www.bigissue.jp/2020/12/17082/
49)10 月 1 日、「夜のパン屋さん」プロジェクト、プレオープン!―コロナ禍の中、新たな「小商い―すぐにできる仕事」づくりを始めます。
https://www.bigissue.jp/2020/09/16335/
50)認定 NPO 法人 Homedoor
http://www.homedoor.org/
51)新型コロナウイルス Homedoor 緊急支援ページ
http://www.lp.homedoor.org/donation
上記全て 2021 年 1 月 13 日確認

 

 

参考文献 
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大山典宏(2013)『生活保護 vs 子どもの貧困』PHP 新書
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